JVOADとは

代表挨拶

自然災害が頻発する昨今、もはや日常の延長線上でいつ災害に遭遇するかはわからない。過去の災害の多くの被災者は「まさか」という言葉を連発するが、そのまさかをこれほど聞かなければならない時代に私たちは生きている。そしてこれからも水害は増加傾向に、また、あの東日本大震災をも上回る被害が予測されている首都直下型地震や南海トラフ巨大地震が目前に控えている。まずは私たちの大切ないのちを守るために、できる限りの備えをしなければならない。災害が起こる前の「防災・減災」が何よりも大切であることを踏まえつつ、しかし、いつも自然はとてつもない力を否応なく人間に見せつける。ひとたび災害に見舞われれば、多くの悲しみや苦しみが待ち受け、修羅場と化した被災地には、多くの支援が必要となる。私はこうした現場に20年以上立ち続けた。

その原点であり「ボランティア元年」と称されたのが1995年阪神・淡路大震災である。以降、被災者支援の一翼として、もはや災害現場にボランティアがいない被災地がないと言っていいほど、災害救援にボランティアは不可欠な存在として、日本社会に定着した。また、個人あるいはグループによるボランティア活動だけでなく、NPO・NGOによる支援も積極的に、かつ活発に行われている。しかし、こうした市民セクターによる災害時の支援活動は、災害ボランティアセンターを介した各々の活動であったり、NPO・NGOが単体で動いたりすることが多く、被災地全体の支援状況を俯瞰したり、それらの活動同士を調整したりする災害時専門の中間支援機能がこの社会にはなかった。したがって、例えば東日本大震災では、いつ、どこで、誰が、どんな活動をしたかについての全体像を語れるものはいまだいない。

ただし、「被災する」という悲しみ、苦しみは、全体ではなく、被災者一人ひとりである。可能な限り、支援の漏れ・抜け・落ち・ムラがないような支援にしなければならない。各々、単体の支援活動は無論尊いが、互いの情報交換や連絡調整があれば、それでもなお残るだろう狭間は埋められるはずである。被災するという人生の一大事に、「助けて」と大声で叫んでいいのだと思う。ただし叫べない人も必ず存在するので、支援者はよほどアンテナをしっかり張り巡らせなければならない。この意味で、行政や企業、研究者、マスコミなど、多様なセクターとの連携は重要である。こうした積年の経験知と反省のもと、JVOADは生まれた。それは単に「連携・協働」といった耳ざわりのいい言葉に甘んじることなく、ともに知恵を絞り、ともに熟慮を重ね、ともに汗を流す信頼関係の中で、ともに災害救援の真髄を尋ねるという大いなるチャレンジでもある。

これまでも、内閣府(防災)、日本経済団体連合会をはじめ、有縁の企業や有識者等各位に様々な場面で貴重なご助言を頂戴した。また理事・会員団体とは、3年にも及ぶ準備会での協議や、関東・東北豪雨、熊本地震等の災害現場で、この機能を生かした支援活動の展開に真剣に向き合っていただいた。そして、次の災害現場では、さらに被災者の苦悩が少しでも安堵につながるよう、JVOADの一層の充実に、残りの人生を賭して望みたいと考えている。より多くの皆様のご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。

2017年元旦
特定非営利活動法人 全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)
代表理事 栗田暢之